こんなお悩みありませんか?
歯周病は、成人の約80%がかかっているといわれる病気です。
セルフチェック表を用意しましたので、当てはまる項目がないか、チェックしてみてください。
□ 口の中のニオイが気になる、人に口臭を指摘されたことがある
□ 起床時の口の中に違和感がある、ネバネバする
□ 歯磨き中に出血がみられることがある
□ 歯茎が赤く、腫れている
□ 歯茎が下がってきた、歯が伸びたと感じる
□ 歯茎を押すと血が出たり、膿が出る
□ 食事の時に食べ物が詰まりやすい
□ 歯が浮いているような感覚がある
□ 歯並びの変化や噛み合わせの違和感を感じる
□ 歯がゆらゆらと揺れるような感覚がある
以上、10個の項目の内、あなたはいくつ当てはまりましたか?
1~3個当てはまった方は、歯周病の可能性がありますので、早めに歯科医院へご相談ください。
4~5個当てはまった方は、既に歯周病が進行している可能性があります。早急に治療を受けてください。
歯周病は無症状のまま進行することもあるため、当てはまらなかった方も定期検診を受けていただき、早期発見・早期治療をしていきましょう。
歯周病とは?
30代以上の方の3人に2人は、「歯周病」であるといわれています。
歯周病は、歯を失う原因のNo.1であり、虫歯以上に抜歯のリスクがあります。
今回はこの歯周病という病気について、詳しく解説していきます。
どんな病気なのか?
「歯周病」は、歯の炎症性疾患の1つで、歯周病菌の感染によって罹患します。 感染した歯の周囲の歯肉(歯茎)や歯を支えている歯槽骨などが次第に溶けて、最終的には歯が抜け落ちてしまう怖い病気です。
歯周病の原因菌は、歯垢(プラーク)と呼ばれる汚れで、歯と歯茎の境目にある歯肉溝に汚れが溜まることで、細菌が停滞し、炎症を起こして赤みが出たり、腫れたりします。 自覚症状が出にくい病気であり、痛みが出る頃には既に進行している症例がほとんどです。
進行過程
<正常>
歯と歯肉の間の隙間(歯周ポケット)は、約1~2mmが正常です。
<軽度の歯周炎>
歯周病の初期、歯周炎になると、この歯周ポケットが約2~3mmに深くなります。
歯周病菌が歯周組織に侵入しつつあります。歯槽骨や歯根膜へと徐々に感染が拡大していきます。
<中度の歯周炎>
感染が拡大して、歯槽骨の半分程度が破壊されている状態です。
このくらいまで進行すると、歯が少し揺れ動くような感覚を覚えることもあります。
<重度の歯周炎>
さらに進行すると、歯はグラグラと目に見えて揺れるようになり、強い痛みが出ることもあります。重症化した歯周病は抜歯を余儀なくされることもありますので、気付いた段階ですぐに受診することをおすすめします。
歯周病は「治る」病気なのか?
結論から先に申しますと、歯周病は”治る病気”ですので、ご安心ください。また、予防も可能です。もともと「不治の病」といわれていた時代もあるため、歯周病は”治らない病気”と誤解されている節がありますが、歯周病治療の技術はどんどん進化していて、治療も可能な病気です。
「歯周病」に大切なのは、予防、そして、早期発見・治療、メインテナンスです。 罹患しないためにも、また、進行を食い止めるためにも、定期的に歯科医院に通っていただき、ご自身の歯を守ってください。
歯周病の原因は、歯垢(プラーク)にあると説明させていただきました。つまり、予防には歯垢を溜めないこと、増やさないことがとても重要です。
- 正しい歯磨きの方法を学び、1日3回しっかりと口腔内の清掃をすること。
- 定期的に歯科でクリーニングを受け、歯垢、歯石の除去をして細菌をなくすこと。
- 治療が必要な場合は、感染拡大予防のためにも、早期に受診すること。
- 治療後も専門的なクリーニングなどのメインテナンスを受け、早期発見・治療に努めること。
以上を守っていただくことで、歯周病の罹患リスク及び抜歯の可能性を最小限に抑えることができます。
歯周病の治療方法
歯周病の原因は「歯垢」(プラーク)であり、細菌の温床となる歯垢を取り除かないことには、歯周病は進行するばかりです。そのため、歯周病の治療は、歯垢や歯石を除去する「歯周基本治療」をメインとします。
この歯周基本治療というのは、セルフケアとプロフェッショナルケアの2つの点から治療を進めていくものになります。セルフケアとは、名前の通り、患者さまご自身で行える日々の歯磨き等を指します。プロフェッショナルケアは、患者さま自身では難しい専用器具を使用したクリーニング等の歯科医院で行うものを指しています。
ただ、歯周病を進行させる因子は生活習慣や基礎疾患を含め多岐に渡るため、歯周病の原因の全てを取り除く目的で「歯周基本治療」が誕生しました。
歯周基本治療は、軽度の歯周病から、重症化した歯周病まで全ての歯周病患者に適応する治療法です。軽度のうちであれば、歯垢や歯石をとるクリーニング等を受けていただくことで治ることもあります。
しかし、歯周基本治療のみでは、歯垢や歯石などの汚れが改善できない症例もあります。そういった重度の歯周炎に対しては、「歯周外科治療」を行っていきます。
「歯周基本治療」と「歯周外科治療」を行い、治療後の再検査にクリアできれば、メインテナンス、クリアできない場合は再び治療を受けていただくといったように、歯周病が治るまで治療と検査を繰り返し、完治を導きます。
① 歯周基本治療
歯周病の治療時にはまず、「歯周基本治療」を受けていただきます。軽度の歯肉炎でも、重度の歯周炎でも同じです。まずは、原因となる歯垢や歯石の除去が最優先され、その次に歯根面を綺麗に滑らかにすること、また、噛み合わせの調整が行われます。
歯垢を除去することは、プラークコントロールといいます。もしかすると、何処かで耳にしたことのある方もいるかもしれません。プラークコントロールは、ご自身のセルフケアを中心としますが、歯科医院で専用器具を用いてクリーニングすることも含まれます。
このクリーニングのことを「スケーリング」といいます。歯の表面や歯根に付着している歯垢や歯石を専用器具で除去することです。また、スケーリングと同時に「ルートプレーニング」を行うのが一般的です。こちらは、歯の表面についている毒素や微生物で汚染された部分を除去して、歯をツルツルにし、細菌が付着しにくい環境にすることです。
また、歯周病は進行とともに「歯」そのものに悪影響を与え、歯が動いてしまいます。動いた歯は噛み合わせが悪くなるため、歯を削る等の処置が必要になることもあります。それでも不安定で噛みにくい場合には歯科用の接着剤を用いて、固定します。
これらの歯周基本治療によって、歯周ポケットの深さが約2~3mmにまで浅くなれば、治療としては完了で、メインテナンスに移ります。
② 歯周外科治療
歯周ポケットの深さが埋まらず、その中で細菌が増え、歯磨きでの除去が難しい場合や重度の歯周病の場合は、外科的に歯周ポケットの溝を減少させる手術をすることもあります。
また、毒素によって溶けてしまった骨を再生する治療もあり、患者さま1人1人の歯周病の病態に合わせて最善の治療を行います。
こちらも同じく、歯周ポケットの深さが浅くなれば、メインテナンスに移ります。
③ 歯磨き
正しい歯磨きの方法を知っている人、また実践できている人は意外と少ないです。 歯垢を除去するには、その部分に歯ブラシの毛先を当てることが必要になりますが、意外と皆さん正しく毛先を当てられていません。
麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院は、ブラッシング指導を行っており、正しい歯磨きをご自宅でも実践していただけるようにサポートさせていただいております。
<正しい歯磨きの5つのポイント>
① 歯ブラシを磨きたい場所に当てましょう
鏡をよく見て歯磨きをすることをおすすめします。磨きたいところにしっかり歯ブラシが当たっているか、確認してください。
② 歯肉を傷付けないようにブラシを動かしましょう
歯ブラシを動かす方法は、横でも縦でも問題ありません。また、円を描くように磨くのもOKです。
③ 力を入れすぎず、軽く磨きましょう
力を入れすぎると、歯ブラシの毛先が広がるため、磨きたい場所にブラシが行き届きません。歯肉を痛める原因にもなりますので、毛束が真っ直ぐ当たるように軽く磨いてください。
④ なるべく細かく動かしましょう
歯には見えない凹凸があるため、なるべく細かく動かした方が歯垢の除去には効果的です。とくに歯と歯の間や歯の裏を磨く時は、小刻みに動かして汚れを掻き出すようにしましょう。
⑤ 1箇所あたり10~20回磨きましょう
歯垢は少々粘り気のある物質のため、歯ブラシで1~2回擦る程度では汚れが落とし切れません。就寝前の歯磨きは5分以上の時間をとり、1箇所あたり10~20回を目安に磨くようにしてください。
歯周外科治療とは?
麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院は、歯周病の治療の1つとして「歯科外科治療」も取り入れています。今回は、重症化してしまった歯周病の外科治療の1つである”フラップ手術”について、ご説明します。
フラップ手術とは?
「フラップ手術は、中度~重度の歯周病の患者さまへ提供できる歯周外科治療です。
具体的には、歯茎を開いて歯根等にまで入り込んだ歯垢、歯石、毒素といった歯周病の根本的原因を徹底的に除去する治療法です。
通常の歯周基本治療でも多くの歯垢、歯石、毒素が除去できますが、歯茎があって取り切れない箇所の汚れは、歯茎を開いて歯根を見えるようにしてから除去するのが有効です。
フラップ手術のみで溶けていた骨も再生することがありますので、原因を徹底的に除去することは、歯周病治療にとってとても重要です。
麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院は、フラップ手術と併せて、溶けてしまった歯槽骨を再生する”歯周組織再生療法”を同時に行うことが多いです。 患者さま自身の血液をメディフュージュと呼ばれる遠心分離機にかけ、AFGやPRPといった再生因子に加工し、代用骨に加えて溶けた歯槽骨に移植したり、血液からつくるCGFフィブリンゲルという膜を用いて再生を促したり、治癒を促進できる方法です。
また、患者さま自身の顎の骨や代用骨、”エムドゲイン”と呼ばれる再生効果のあるジェルを用いることでも、溶けてしまった骨を再生できる時代になりました。
歯周外科治療の目的
- 深い歯根面まで器具をしっかり届けるため
- 歯や骨に接着している歯肉の幅を増やすため
- 歯周ポケットの改善をするため
- 見た目にも美しい歯を目指すため
- 歯を支えている骨を再生するため
- 歯茎や歯槽粘膜の改善を図るため
- プラークコントロールしやすい環境にするため
- 補綴治療の前に口腔内の環境をよくしておくため
歯周基本治療をしても、歯周ポケットの深さが4mm以上と改善がみられない場合は、歯茎を切開して歯根の歯垢、歯石、毒素を除去する歯周外科治療をおすすめしています。
歯肉を切って、歯根部をあらわにする外科手術となりますが、歯を支えている骨が溶け出るのを食い止めるのにとても有効な方法です。深い歯周ポケットを作った歯石を肉眼で確認して除去することができるので、徹底的に原因を取り除くことが可能です。
適応外となるケース
歯周外科治療は、上記の8つの目的があり、とても有効ですが、全ての患者さまに適応するわけではありません。例えば、抗血小板薬や抗凝固薬といった血液をサラサラにするお薬を服用している方や、手術ができないような持病がある方には適応しません。
また、最も重要なのは、「毎日のお手入れをしっかり実践できない人」には不向きな治療方法であるということです。
歯周外科治療をする前には磨き残しがないかを調べますが、その検査結果の数値が20%以下にならない方には適応しませんので、ご注意ください。
麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院の「歯周外科治療」は、患者さまの血液よりつくる再生因子(CGF、AFG、PRP等)やエムドゲイン、人工骨、代用骨、コラーゲン膜、d-PTFE膜を用い、最終はCO2レーザーを使って治癒促進まで行う方法です。
外科手術ということで、ご心配される患者さまも少なくありませんが、当日のみ抗不安薬の併用も可能ですので、安心して手術に臨むことができます。
唯一の懸念点は、自由診療となることです。これらの歯周組織再生療法に使用する材料や器具は非常に効果なものが多く、また、最先端の治療技術をしっかりお届けするため、時間も要します。時間や費用の負担ができる患者さまのみが、適応される治療法となります。
再発のリスクについて
歯周病は、毎日の歯磨き等生活習慣が原因となって起こる病気です。そのため、折角治療を受けていただいても、今まで通りのお手入れでは、また歯周病が再発してしまう恐れがあります。
折角の治療をムダにしないためにも、治療後は正しい歯磨きの方法を実践していただくこと、また、メインテナンスを忘れずに受けていただくことをおすすめしています。
歯周外科治療の選択
① 歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術)
歯肉を切って開き、歯根に強固に付着している歯石を肉眼で見ながら除去していく方法です。手術なしには見ることのできない部分を目視で見れるので、より確実に除去できるのが利点です。綺麗に除去した後は、切開した部分を縫合し、約1週間で抜糸が可能です。 先述の通り、最近は歯周組織再生療法と併せて行うのが一般的です。この2つの面から歯周病に働きかけることにより、口腔内の環境をよくして、骨や歯茎までも再生することができます。患者さまの歯の寿命を延ばせる方法として、おすすめさせていただいております。
② 歯周ポケット掻爬術
フラップ手術とは異なり、歯肉の切開はせずに、原因となる歯垢や歯石を除去する方法です。スケーリング、ルートプレーニングといったクリーニングの処置で使用するものを用いて、歯根に付いている汚れや歯周病菌に冒されている歯肉を取り除きます。 清掃が行き届くと歯根と歯肉が癒着し、歯周ポケットの深さも改善がみられるようになります。
③ 歯肉切除術
名前の通り、歯肉をメスで切除する方法です。歯周ポケットが深くなってしまった部分を除去して、プラークコントロールをしやすくします。麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院は、最新の「CO2レーザー」を用いて治療に当たるため、従来の歯肉切除術のようにメスは使わず、レーザーで切除して、止血、再生を促します。術後の傷の治りも早く、患者さまの負担の少ない外科手術の1つです。
④ 小帯切除術
口腔内の頬や舌、上下唇のひだのようなものを”小帯”といいます。とくに乳幼児の場合は、上唇をめくった時の小帯が厚かったり長過ぎることがあり、小帯が歯の間よりも長く歯茎の裏まで入り込んでしまっていることもあります。このような場合は、切除が必要です。 発音等の言語障害、歯と歯の隙間が大きい正中離開、見た目の問題に繋がる可能性があるためです。 この手術も「CO2レーザー」を用います。切除、止血、再生を1度に行いますので、患者さまの負担は最小限で済みます。また、切除の際にしっかりと骨膜を一部切っておくと後戻りも少なくなります。術後は、舌の運動や発音のリハビリなどをして、再び癒着しないようにすることも重要です。
⑤ 口腔前庭拡張術
口腔前庭とは、頬の内側の粘膜や上下の歯の間にできるスペースのことです。ここが浅く、しっかりと歯磨きができない場合、毛先が歯槽粘膜に当たってしまって痛い場合などは、粘膜を根尖側に下げて、付着している歯肉をつくることが必要です。 適切なスペースとなるように拡張して、骨膜と縫合します。
⑥ 露出根面被覆術
外に露出してしまった歯根を、元の位置に戻す治療法です。歯根の露出は歯周病の他、噛み合わせの異常や歯磨きの不足によって引き起こされることもあります。歯根が露出してしまっている部分に、別の歯肉を移植して被せたりする方法です。
フラップ手術の重要性
軽度の歯周病治療は、歯周基本治療のみで治ることもあります。しかし、重度の歯周病になると顎の骨が溶け、歯周ポケットの溝も深まるため、深部まで器具が行き届かなくなってしまいます。こうなった時の治療方法がフラップ手術です。器具の届かない奥深い歯垢や歯石まで、しっかりと除去できます。
フラップ手術は歯肉を切開して歯根をあらわにするため、目視で汚れを除去できるのが最大のメリットです。安心・安全に歯や歯肉を傷つけることなく、細部の汚れまで徹底的に清掃できます。
注意点
フラップ手術は、毎日のお手入れをしっかりできる患者さまにのみ、おすすめしている治療法です。歯磨きが不十分ですと、患部に歯周病菌が入り込み、さらに重症化させてしまうリスクがありますので、極論、歯磨きをしないのであれば、フラップ手術はしない方が良いまであります。
麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院は、患者さま1人1人の口腔内の状況に合わせて、正しい歯磨きを実践していただけるようなサポートを行っております。日頃の歯磨きのクセなども把握し、磨き残しがなくなるように指導いたします。
フラップ手術は、汚れを除去することを目的としますが、歯根を必要に以上に傷付けないこと、滑らかに仕上げていくことが求められます。安心・安全の精度の高い治療には、手術用の高倍率の拡大鏡や質の良い器具が必要です。
歯周病菌への2つのアプローチ
歯周病菌へのアプローチは大きく分けて2つです。それぞれのアプローチの仕方について、詳しくご説明します。
① 歯垢のつきにくい口腔内をつくること
細菌は付着するために、ザラザラしているところ、凹凸のあるところを求めています。少し歯を磨かないでいるとザラザラとした歯触りになるように、汚れのある歯は細菌が付着しやすい状態といえます。つまり、舌で歯を触った時にツルツルと滑らかになっているかどうかが、歯周病の原因菌である歯垢の付着に大きく関わるということです。
また、歯石というのは、歯垢が固まったものです。歯垢のうちは、歯磨きでも落とせますが、石のように固くなると、歯磨きでは落とせなくなります。歯科医院で「歯石をとりますね。」といわれたことのある患者さまも多いと思いますが、これは、既に付着している歯石をとることと、歯石に細菌が付着しないために行われています。
口腔内で凹凸がみられるのは、虫歯の治療痕等が良い例です。治療後時間の経過とともに詰め物と歯の隙間が広がってくるため、細菌が入り込みやすくなります。この凹凸をなくして滑らかにするのも、歯周病菌へのアプローチの1つといえるでしょう。
さらに、凹凸のある箇所では噛み合わせの悪い部分も当てはまります。歯並びの悪い部分はどうしても歯ブラシが行き届きにくいため、ブラッシング指導の他、歯列矯正をおすすめさせていただくこともあります。
歯垢や歯石のつきにくい口腔内をつくるには、このように徹底した口腔内環境の維持が必要です。既に歯周病が進行している患者さまはとくに、原因を排除するなどの改善が求められます。
② 歯肉の中の細菌までも綺麗に除去すること
歯周ポケットの深い人ほど、その溝の奥にまで細菌が入り込んでしまうため、歯周病が重症化しやすくなります。歯周病治療の根本は、この歯周ポケットを浅くすることであり、治療後には必ず歯周ポケットを測る検査を行います。
歯周ポケットを浅くするためには、歯肉の中に入ってしまった細菌を除去することが必要です。歯科医学的には、SRPや歯肉縁上のデブライドメントといいますが、これが、歯周病の根本的な治療法です。
ただ、歯肉溝というのは歯科医の拡大鏡をもってしても目視できるものではありませんので、手探りで細菌を除去する形になります。当然、歯肉溝の中には時間が経って石のように固まった歯石も含まれるので、治療時間も手間もかかります。処置は痛みが出るため、患者さまの負担の大きい治療法となりますが、この治療を行わないことには歯周ポケットの溝は深まる一方です。治療後は口腔内がスッキリして、明らかに違いを感じていただけますので、どうかこの治療を受けていただきますようお願いしております。
SPRを受けた患者さまは、「口臭がなくなった」、「口の中がネバネバしない」、「歯磨きの時に出血しない」などの感動を覚える方も少なくありません。
噛む力へのアプローチ
歯周病によって、歯を支える骨が溶けてしまうと、「噛む」という日常動作に支障が出ることもあります。そういった場合には、しっかりと噛めるような治療も取り入れていきます。 具体的な方法としては、ブリッジや入れ歯、インプラント、自家歯牙移植等の選択肢があります。重要なのは、他の歯になるべく影響を及ぼさないことです。
ただ、他の歯に負担をかけない選択肢をしようと思うと、自由診療になるなど、費用がかかることもあります。麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院は、患者さまのご要望やご希望に合わせて、さまざまな選択肢をご提案させていただきます。患者さまご自身がご納得いただける最善の治療を一緒に考えていきましょう。
「噛む」ことへのアプローチは、患者さまによって必要性の有無も含め、大きく異なります。処置が必要になるかどうかも含め、詳しくご説明させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
青山一丁目麻布歯科の歯周病治療の特徴
麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院は、精密な検査結果のもと、患者さま1人1人に合わせた治療計画をご提案しております。また、患者さまのお悩みやご要望、ご希望に合わせて治療計画をおつくりいたしますので、安心してご相談ください。
また、中度以上の歯周病と診断できる場合は、以下の7点に注意して歯周病の完治を目指します。
① 歯科衛生士による専門的な管理
歯周病は一生付き合っていく必要がある病気です。
一度歯周病だと診断されたら、歯茎や歯周ポケットにある症状がこれ以上進行しないように管理する必要があります。
歯周病は、慢性化しやすい疾患なのです。歯科医師は歯周病の診療計画や治療を行っていきますが、歯周病が起きた歯の管理には、歯科衛生士の専門的な管理や歯石や炎症の除去が必要です。
当院には常勤の歯科衛生士が複数います。
そのため、通院いただければ歯科衛生士の専門的な処置を受けられます。
② 精密機器を活用した治療
精密な機械や器具による診査や診断当院では精密な作業を可能にする機械や器具を導入しています。
これは歯周病治療にも活かされており、検査や診断、処置はこの精密な機器により行っていきます。
歯茎や歯周ポケットの状態を細かく、適切に確認し、健康な状態を維持するための処置や指導を行うことで、歯周病が進行しないようにお手伝いをします。
③ 日本歯周病学会指導医・専門医の監修
当院は日本大学歯学部保存学教室歯周病学講座の歯周病指導医である高山忠裕先生による監修を行っています。
歯周病治療の専門医の目で監修を受けながら治療に取り組んでおります。
こちらのリンク先をご覧下さい。
④ 会話や食事を問題なく楽しめる治療
歯周病に限らず、全ての歯科治療は、今まで通り食事や会話が楽しめることです。 そのためには、噛み合わせの検査も欠かせません。患部の治療後には、上下顎を結ぶ顎関節まで調べ、噛み合わせにも影響が出ないようにしています。 また、顎関節の治療においては、「m-HBP」と呼ばれる特別なマウスピースを使用しています。治療後も何不自由なく、会話や食事が楽しんでいただけるよう、また、口腔内の病気の再発を防ぐ意味でも、噛み合わせに着目して治療を進めています。
⑤ インプラントという選択肢
当院は、なるべく抜歯をしない歯周病治療を専門に行っている医院です。歯周病で溶かされた歯周病の再生や歯周形成外科手術など、精度の高い治療も可能です。また、なるべくご自身の歯をお使いいただけるのが1番ですが、抜歯をせざるを得ない症例では、インプラントにも対応しています。
日本以外の歯科医療の先進国をみると、歯周病の専門医が多く、インプラントの治療にあたっています。インプラントと歯周病は、どちらも歯周組織に大きく関連しており、共通する部分も多くあります。
⑥ こだわりの補綴治療
仮歯の作製、補綴設計、模型上のシミュレーションには、精密な印象採得が必要です。また、最終的にご自身の「歯」となる本歯の補綴治療もとても重要です。 補綴の精度は、歯の寿命に大きく関連し、その良し悪しで虫歯や歯周病の再発リスクが大きく異なります。重要なのは隙間なく補綴することであり、細菌が隙間から入り込まないようにします。
また、根管治療も同じです。どんなに精度の高い根管治療でも、最後の補綴物の完成度が低いと、また神経が感染してしまう恐れがあります。しっかりと患者さま1人1人に適合する安心・安全の補綴物をおつくりします。
⑦ メインテナンス・プログラム
ご自身の歯をより長くお使いいただくためには、定期的なメインテナンスが必須です。 セルフケアを毎日しっかりと行っている人でも、多少の磨き残しは発生しますし、定期検診は虫歯や歯周病の早期発見にもなります。
毎日の歯磨きのみで綺麗にできているとは思わず、是非、定期的にご来院ください。
<治療と予防の重要性>
歯周病は「不治の病」だといわれていた時代もありましたが、今は急速に研究が進み、予防も治療もできる病気です。また、何の病気にも同じことがいえますが、歯周病は、早期発見、早期治療がとても重要です。では、具体的にどうすれば良いのかというと、歯科医院の定期検診を受けていただくのが大切です。
歯周病は成人のうち、8割がかかっているともいわれている病気ですので、放置して、進行してしまうのは1番避けたいところです。仮に重度の歯周病と診断されたとしても、改善は可能ですので、自覚症状がない方も、既に症状を自覚している方も、まずは1度検査にご来院ください。
また、歯周病は予防も可能な病気ですので、毎日の歯磨きを通じて、対策していきましょう。当院には歯周病の予防を目的としたプログラムもあり、予防専門のユニットや専門フロアも導入させていただいております。患者さま1人1人の年齢や口腔内の環境、歯周病の有無を把握した上で最善のケアをご提案させていただきます。 是非、お気軽にお問い合わせください。
歯周病とその他の病気の関連性
歯周病の原因は、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌です。歯磨きの行き届かない場所に付着するもので、少し粘り気があり、色はやや黄色みのある白色です。歯垢は少しずつ量を増やし、酸素が欠乏すると、歯垢の中で嫌気性菌と呼ばれる細菌が増えます。この菌が歯肉に悪さをはたらき、体内に侵入しようとするのが歯周病の始まりです。身体は細菌から身を守るため、攻守を行い、出血や腫れ、歯肉の赤みに繋がります。歯磨きの時に血が混じる歯周病の症状は、歯周病菌と白血球のバトルが繰り広げられていることを意味しています。
出血のある状態をそのままにすると、歯垢は歯周ポケットの深部に入り込み、歯を支える骨など歯の周りにある組織を破壊していきます。「歯周病」と診断できる状態は、常に炎症が起きているということでもあり、その炎症によって排出される物質が他の病気にも影響を及ぼします。
炎症によって出る物質は毒性であり、歯肉の血管より全身に運ばれます。例えば、血糖値を低下させるインスリンのはたらきを抑制したり(糖尿病)、妊娠中の早産や低体重児出産の他、血管の動脈硬化(脳梗塞や心筋梗塞等)、肥満の原因にもなるなど、さまざまな部分に悪影響を及ぼします。
また歯周病菌の一部に、口腔内の誤嚥から、気管支や肺に入り込むこともあります。高齢者の死亡原因の1つでもある”誤嚥性肺炎”とは、これが、原因です。また、歯周病菌のうち、Pg菌(ポルフィロモナス・ジンジバーリス)が持つ”ジンジパイン”と呼ばれるタンパク質の分解酵素はアルツハイマー病の悪化とも大きく関与するといわれています。
歯周病は、全身の健康に深く関連しているのがお分かりいただけたでしょうか。毎日のセルフケアを見直し、健康寿命を延ばせるように努めていきましょう。
狭心症、心筋梗塞との関連性
動脈硬化の原因は、運動不足や食生活の乱れ、ストレスといった生活習慣に多くあるといわれています。しかし、近年は別の因子として、歯周病菌等の細菌感染も多くみられるのではないかと考えられています。
歯周病菌によって、動脈硬化を誘発する物資が排出され、血管の内部に歯垢(脂肪性沈着物)ができると、血液の巡りを阻害します。そのプラークが剥がれ、血が固まると血管が詰まったり、細いところで流れなくなったりと、動脈硬化を引き起こす、というものです。
動脈硬化は、心臓へしっかりと血液を送ることができなくなるため、狭心症や心筋梗塞の原因となり、最悪は死に至ることもありますので、生活習慣の見直しの他、歯周病菌が原因となるケースがあることも把握し、日々の予防、治療に努めてください。
脳梗塞との関連性
しくみとしては、上記と同じです。脳の血管のプラークによって詰まりを起こしたりして、脳梗塞となります。実は、歯周病患者は、歯周病ではない人の約3倍、脳梗塞になりやすいといわれています。
普段から、高血圧、高コレステロール、中性脂肪の高さを指摘されている方は、より気をつけていただきたいと思います。
糖尿病との関連性
糖尿病の患者さまは年々増えていて、疑いのある人でも約900万人、可能性のある人で約1,300万人、合わせて2,200万人以上の方が「糖尿病」もしくは予備軍であると推測できます。
糖尿病と歯周病との関連性は深く、糖尿病の合併症の1つで歯周病があるといわれてきました。事実として、糖尿病患者は、健康な方と比べて、歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いということも分かっています。
また、最近では、歯周病が重症化することで糖尿病の症状も悪化するといわれています。つまり、相互に悪影響を与えるほど密接な関係があるのです。
そんな中、歯周病の研究は進み、歯周病の治療が糖尿病の改善にもなることも分かってきています。既に罹患している場合でも、双方が双方に与える影響が大きいため、是非どちらの治療にも努めていただければと思います。
歯周病と妊娠の関連性
妊娠すると歯肉炎、歯周炎にかかりやすくなると聞いたことはありますか?
これには、女性ホルモンが大きく関連しているといわれています。女性ホルモンのうち”エストロゲン”(卵胞ホルモン)は、ある一部の歯周病菌の増殖を活性化させることが分かっています。また、歯肉をつくる細胞も、このエストロゲンの標的になります。
この他、プロゲステロン(黄体ホルモン)は、炎症の原因となる”プロスタグランジン”を刺激します。
これら2つの女性ホルモンは、妊娠をきっかけに増えはじめ、胎動が分かるくらいになると、妊娠前の10~30倍にもなるといわれています。これが、妊娠中期、後期の妊娠性歯肉炎の原因となります。
ただ、何度もいうように、歯周病の原因は歯垢にあります。歯垢の溜まらない口腔内であればクリーニング等で済みますので、プラークコントロールを行ってください。この時期に油断すると、産後に歯周病が短期間で進行することもありますので、十分に注意しましょう。
また、まれに”妊娠性エプーリス”と呼ばれる良性腫瘍ができることもありますので、その場合は、すぐに歯科医を受診してください。
低体重児出産との関連性
妊娠している女性に歯周病がみられる場合、低体重児及び早産のリスクが高くなるといわれています。口腔内に存在する歯周病の細菌が血管の内部に侵入して、胎盤を通して、胎児に直接感染が広がるのではないかと考えられています。
そのリスクは歯周病に罹患していない方と比べ、約7倍にも増えるといいます。妊娠中は喫煙や飲酒を控えてください、高齢出産にはリスクがありますとよくいわれますが、それ以上に高いリスクがあることを知っていただきたいです。
妊娠中は悪阻等も相まって、口腔内の環境が清潔に維持しにくい場合もあるとは思います。しかし、生まれている赤ちゃんのためにも、毎日3回は歯磨きの時間を設け、なるべく口腔内を清潔に維持しましょう。
誤嚥性肺炎との関連性
誤嚥とは、食べ物や飲み物を飲み込む時に、食道ではなく気道に入り込んでしまうことで起こる肺炎のことです。通常、肺や気管といった部位は咳をすることによって、食べ物が入らないように守ることができます。しかし、高齢になると、この力が弱まるため、誤って気管から肺へと誤嚥してしまうことが増えます。また、その際に口腔内の細菌までも一緒に飲み込んでしまうため、肺の炎症に繋がるというわけなのです。
免疫力の低下した高齢者ほど、誤嚥性肺炎の発症リスクは高まり、とくに脳血管障害のみられる患者さまに多いです。
誤嚥性肺炎の原因はいくつもありますが、多くは歯周病菌であり、歯周病の治療が誤嚥性肺炎の予防にもなります。
骨粗鬆症との関連性
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下し、骨量が減って骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症に罹患している患者さまの内、女性は90%で、男性は10%しかいません。日本では、約1,000万人以上の方がこの骨粗鬆症に悩まされているといいます。
女性の患者さまが多い理由は、女性ホルモンのうち、エストロゲンの分泌の低下によって発症するからです。エストロゲンは、骨の代謝に大きく関わりますが、閉経後に大きく分泌量を落とすため、閉経後の女性がかかりやすい病気といわれています。
閉経後の骨粗鬆症の女性患者さまにおいて、歯周病が進行しやすいといわれるのも、このエストロゲンの減少が原因です。骨の代謝が下がり、全身の骨がもろくなるということは、歯を支えている骨も弱くなるということです。また、深まった歯周ポケットの中では、炎症物質が増加し、炎症がさらに加速化します。
閉経後の女性は、歯肉炎、歯周炎のない女性でも、エストロゲンの分泌量が少なくなるがために、歯周病にかかりやすく、進行しやすい状態です。
また、骨粗鬆症の服用薬としてよく用いられている”ビスフォスフォネート”(BP製剤)と呼ばれる薬がありますが、これを服用している患者さまが抜歯した際に、周りの骨が壊死してしまうといったトラブルの報告があります。歯周病の症状で歯が揺らぐことがありますが、自分で抜歯してしまうことのないようにお願いします。
メタボリックシンドロームとの関連性
メタボリックシンドロームは、おへそをぐるりと一周した時のウエストが男性で85cm、女性で90cm以上あること、また、以下の3つのうち、2つ以上が基準値を上回ることで診断されます。
- 血圧
- 血糖
- 脂質
内臓脂肪の面積は100c㎡以上であり、高血圧や高血糖、脂質の異常の値が大きく上回らなくても、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高くなるといわれています。
生活習慣病の”前段階”とも呼ばれるメタボリックシンドロームは病気でこそありませんが、今の生活習慣を続けていると、病気に罹患する確率は非常に高いです。また、このメタボリックシンドロームの段階であっても、歯周病とは大きな関係性があります。
歯周病の患部からは、LPSと呼ばれる毒素やTNFαが排出されます。これらは、インスリンの抵抗性を増加させるはたらきがあり、血糖値を上昇させてしまいます。
また、重度の歯周病患者さまでは、血中のCRPの数値が上昇するため、先述の通り、動脈硬化や心筋梗塞、狭心症といった病気のリスクを高めます。
最近では、歯周病の慢性的に続いている炎症が私たちの老化を促進し、健康寿命を縮めるといった論文も出されています。
歯周病と喫煙習慣の関連性
「タバコは百害あって一利無し」といわれています。タバコの煙の中には、数千単位の化学物質が含まれていて、その中には、発がん性物質やニコチンといった有害物質も200~300あるなど、やっぱり、喫煙は身体によくありません。
喫煙習慣は口臭の原因になる他、歯周病や歯槽膿漏にかかりやすく、治りにくいといわれているので、できることならやめていただきたい習慣の1つです。
1日に10本以上喫煙する人は、非喫煙者の5.4倍、歯周病の罹患リスクが高くなります。また、10年以上喫煙習慣のある人は、さらに4.3倍に上昇し、重度の歯周病にもなりやすくなります。
理由の1つとして、喫煙していると、歯肉の腫れや出血が抑えられてしまうため、歯周病に気付かないままに重症化してしまうことが挙げられます。
また、喫煙習慣がある状態で治療を開始しても、予後が悪く、効果の現れ方がタバコを吸わない人よりも低いことが多いです。
タバコの煙に含まれている一酸化炭素や、タバコに含まれているニコチンによる影響だと考えられています。
とくに「ニコチン」は一種の神経毒であり、血管を収縮させ、栄養が不足します。免疫力も低下し、アレルギー反応も出やすくなるなど、口腔内以外の部分にも悪い影響を与えます。さらに、傷を治す組織をつくる繊維芽細胞のはたらきも抑制してしまうため、手術をしても、傷の治りが遅くなります。
タバコは”ヤニ”として歯の表面に付着するため、歯に凹凸が生じ、細菌がつきやすい歯をつくってしまいます。そのヤニからは、ニコチンが染み出していきますので、口腔内の環境を悪化させる大きな原因となるのです。
禁煙するとどうなるのか?
何年喫煙しているとしても、「今」禁煙すれば、確実に今よりも良い口腔内に改善できます。また、歯周病の罹患リスクは、40%も減少します。
禁煙している状態で歯周外科治療を受けていただいた場合の治療経過は、非喫煙者と差がなくなります。肺がんの罹患リスクも、禁煙年数に応じて下がっていきますので、是非今日からでも禁煙を始めてみてください。
また、自分1人での禁煙が難しい場合は、禁煙外来等に頼るのも1つの方法です。
健康寿命延伸のためにできること
「歯周病」はお口の中の病気ですが、全身の健康に大きく関わる病気です。歯周病も、動脈硬化も、糖尿病も、”生活習慣”が原因となる病気ですので、関連しているのは最早当然ともいえるのかもしれません。
とくに注意したいのは、食生活、そして、毎食後の歯磨きです。食事と歯磨きの生活習慣の見直しだけでも、これらの病気を予防することに繋がります。まずは、できることから少しずつ取り組んでみてください。
歯周病は8割もの大人が罹患しているといわれるように、”歯磨きの習慣がある”だけでは予防できません。一方、歯医者は自分では分からない口腔内の変化を察知し、早期発見・早期治療に努めています。
定期的に歯科医院を受診し、正しい歯磨きの方法、生活習慣の見直しに繋げていってください。
インプラント周囲炎とは?
名前の通り、埋入したインプラントの周囲に炎症が生じるものです。歯周病と同じく、細菌が原因の感染症であり、インプラントに付着した歯垢(プラーク)が根本的な原因となります
インプラントが埋入された部分は、骨が周囲にあり、歯肉にも接しています。この周辺が綺麗に保たれていないと、埋入した部分で歯周病菌が増加し、炎症が広がります。また、細菌が”サイトカイン”と呼ばれる毒素を排出して、徐々に歯周組織を破壊して、最終的にはインプラントが抜け落ちる原因となります。
進行過程
<正常>
人工歯の部分とインプラント体の間までしっかりと清掃が行き届いていて、インプラント周辺の歯肉、歯槽骨が正常な状態であれば、埋入したインプラントがしっかりと骨と結合していると判断できます。
<インプラント周囲粘膜炎>
インプラント周囲炎の前段階は、粘膜にのみ、炎症が生じている状態です。
上部の人工歯とインプラント体の接合部に歯垢が溜まっているのが原因で、歯肉等に炎症が起き、放置すると、拡大してインプラント周囲炎となるリスクがあります。
<インプラント周囲炎>
歯肉の他、歯槽骨にまで感染が拡大している状態です。歯槽骨の破壊等、歯周組織が崩れるとインプラントを支えきれなくなり、ぐらぐらと揺らいで、最終的に脱落します。 進行によって、軽度、中等度、高度と分けられ、適切な治療が求められます。
症状
歯周病は自覚症状の少ない病気といわれますが、インプラント周囲炎も同じく、自覚症状のないままに進行していることがあります。痛みや違和感を生じた時には既に中等度以上に進行している可能性がありますので、早急に歯科医院に相談する必要があります
そんなインプラント周囲炎の症状には、以下のようなものがあります。
① 歯肉の腫れや出血
周囲に炎症が生じると、歯肉が赤く腫れたり、歯磨きの時に出血がみられるようになります。
② 歯周ポケットの形成
歯肉から歯槽骨までの距離が深くなると、その隙間に食べ物のカスや細菌が入り込み、さらに深部へ炎症が拡大してしまいます。この歯周ポケットの形成も、歯肉の炎症が原因となりますので、日頃から歯磨きを徹底していただき、定期的に健診(クリーニング)を受けていただくことが大切です。
③ 埋入部からの排膿
歯周ポケットの深い部分に細菌が入り込み、感染が拡大すると、膿が出てくる”排膿”がみられるようになり、強い痛みを生じることもあります。
④ 周囲の歯肉の退縮
周囲の歯肉や歯槽骨、歯周組織の破壊が進むと、歯肉が下がる”歯肉退縮”が生じます。上部にある人工歯が多く露出して見えるようになり、歯が長くなったと感じることもあります。本来は歯肉の中に埋まっていて見えるはずのない接合部の露出、本来は骨の中にあるインプラント体そのものが肉眼で確認できるようになってしまうこともあります。
歯周病との違い
インプラント周囲炎は、歯周病と同じく、細菌に感染することで生じる疾患であり、どちらも付着する歯垢(プラーク)が原因です。
どちらの疾患も自覚症状が出にくいため、定期検診がとても重要です。日々のお手入れはもちろんのこと、定期的な健診で、予防や早期発見・治療に努めましょう。
歯のメインテナンス
歯周病は”予防第一”です。再発リスクの高い病気ですので、治療後は定期的に検診を受けていただき、歯周病や虫歯にかかりにくい口腔内を維持していきましょう。
歯周病の治療後は、3ヶ月~半年に1回の受診をおすすめしています。
口腔内、とくに歯と歯肉の溝の清掃がしっかりできていないと、また、同じように歯垢が溜まり、歯周病が再発してしまいます。定期検診は、この汚れの除去の他、正しい歯磨きをサポートさせていただきますので、セルフケアとの両面から予防が可能となります。
多くの細菌の住処となっている歯垢は、毎日の歯磨きでも十分に除去することができる汚れです。しかし、歯周ポケットの深部や歯の重なり合った部分の歯垢は歯ブラシが行き届かなく、ご自宅での清掃は難しいです。これらは、定期検診の際に、「PMTC」と呼ばれるクリーニングで除去していきます。
歯周病は”治る病気”ですが、再発の多い病気でもありますので、油断は禁物です。歯磨きが行き届かなかったり、メインテナンス(クリーニング)を怠ると、また、歯周病菌を活性化させてしまいます。1度歯周病にかかった場所は、他の歯よりももろくなっていることが多いため、あっという間に再発、重症化してしまうことがあるので注意してください。
また、歯周病治療には限界があるため、”完治”とはいえないこともあります。メインテナンスを継続して受けていただくことにより、歯周病の再発予防、進行を食い止めることが可能となりますので、忘れずに受診するように心がけてください。
<メインテナンスの主な内容>
- 歯周精密検査
- X線検査
- 歯周ポケットの測定
- 歯の動揺度の検査
- 歯磨きの確認
- 噛み合わせの確認
- 生活習慣の見直し
- PTMC
- 抗菌剤の塗布
- フッ素の塗布
アメリカでは、歯周病を”静かなる疾患”と呼ぶことがあります。
患者さま自身が自覚症状のないままに、歯周病に罹患してしまうことをあらわしています。
再発も同様ですので、症状がなくとも、定期検診を受けていただき、歯周病の再発リスクを最小限に抑えることが重要です。
歯周病のよくある質問【Q&A集】
Q1.歯周病と診断されました。治療しないと、どうなりますか?
歯周病は風邪とは違い、自然治癒することはありません。 また、サイレントディジーズ(静かなる病気)と呼ばれることもあるように、自覚症状のないままに進行することが多いため、「症状がないから、大丈夫」と放置するのは危険です。
歯周病にかかった歯の寿命も縮まり、その周囲の組織や他の歯にも悪影響を及ぼします。 最近では、歯周病が身体のさまざまな健康に関与することも判明してきていますので、「歯周病」と診断されましたら、医師のもと、しっかりとした治療を受けてください。
Q2.歯周病は治る病気ですか?
軽度の歯周疾患は、”歯周基本治療”のみで完治することができます。中等度以上の歯周病に関しても、外科処置や再生療法を混じえながら、完治を目指せます。ただ、重症化した歯周病を治すのはとても難しいことであり、抜歯することをおすすめする場合もあります。
なるべく歯を残存させる方法を選択しますが、その歯やそれ以外の歯にとって、「抜歯」の方が良い未来を生むこともあるのです。 このことからも分かる通り、歯周病は早期発見、早期治療が完治のカギとなります。
Q3.歯垢(プラーク)とは何ですか?
簡単にいってしまうと、歯磨きで除去しきれなかった汚れです。白~黄白色をしていて、若干粘り気があります。歯垢の中には多くの細菌と産生物(バイオフィルム)が含まれていて、歯周病の直接的な原因となります。
歯垢は歯の僅かな凹凸にしっかりと張り付いているので、うがいだけでは除去できません。そのため、日々の歯磨きでしっかりと落としてあげる必要があります。また、この歯垢が溜まると時間の経過とともに歯石に変化し、さらに強固に歯に付着します。
Q4.歯磨きは1日に何回するのが良いですか?
理想は、毎食後すぐに磨いていただくのが良いでしょう。口腔内の細菌の活動性が高まる食後に磨くことで、繁殖を予防できます。また、歯垢(プラーク)は時間の経過とともに固くなり、除去しにくくなります。そういった意味でも、食後はすぐに磨くのをおすすめしています。
また、1日1回はしっかりと時間をかけて歯磨きをする時間を設けてください。歯磨きはその内容が重要なので、1日3回適当に磨いていたところで汚れは落ちきりません。就寝前は念入りに歯間ブラシやデンタルフロス、タンクリーナーを活用したお手入れが望ましいです。
Q5.歯周病の治療期間はどのくらいですか?
歯周病の治療は、歯肉の様子や普段のお手入れ具合、歯周ポケットの改善を見ながら次のステップに移行するため、少々時間がかかることも多いです。軽度のうちは短期間で終了することもありますが、中等度以上の場合はコンスタントにご来院いただくことも必要です。
また、治療後も引き続きメインテナンスが必要になりますので、3ヶ月~半年に1回は受診していただきます。
Q6.歯が自然に抜けてしまいました。放置しておくのはよくありませんか?
歯を抜けたままにしてしまうと、隣の歯がスペースを埋めるように動いてしまったり、噛み合わせの逆側の歯が伸びてしまったりといったトラブルがあります。また、歯並びに凹凸があると汚れが溜まり、歯周病や虫歯の原因となることもあります。
今回抜けてしまった歯の原因にもよりますが、歯周病が原因の場合は、他の歯も罹患しているリスクがありますので、早急に受診するようにしてください
Q7.治療後のメインテナンスはどのくらいの頻度で行けばいいですか?
何の病気でも同じですが、定期検診は非常に大切で、口腔内の病気もまた、予防、早期発見・治療が重要です。症状のあるなしに関わらず、治療後は正しい頻度で、定期検診を受けに来てください。 患者さまによっても大きく異なりますが、目安は年に3回で、3ヶ月~半年に1回、ご来院ください。
Q8.メインテナンスは何故重要なのですか?
歯周病は再発リスクの高い病気ですので、再発を未然に防ぐため、再発時に発見しやすくするためにも、メインテナンスが重要です。ご自宅での歯磨きのみでは、完全に歯垢を除去するのは難しいので、メインテナンスは、その清掃も兼ねています。専用の器具を用いて、歯垢や歯石を除去するプロフェッショナルケアを受けていただけます。
治療後のメインテナンスであるのは間違いありませんが、治療の延長線上にあるものですので、必ず継続するようにしてください。
Q9.メインテナンスを途中で中断してしまいました。どうなりますか?
歯周病は、口腔内の歯垢、歯石に含まれる細菌が原因です。これらの汚れは、日々のお手入れでも100%取り除くことができないため、メインテナンスを途中で中断してしまうと、また細菌が増加して、いつ歯周病が再発してもおかしくない状況になってしまいます。
以前の治療の効果もなくなる他、さらに重症化してしまうこともありますので、歯科衛生士によるクリーニングは定期的に受けていただき、メインテナンスを継続していきましょう。
Q10.歯周病は予防できますか?
歯周病の原因は細菌にありますので、その細菌を除去し続けていれば、歯周病に罹患することはありません。正しい歯磨きを指導させていただきますので、それをまずは実践してください。それでも汚れの溜まりやすい歯周ポケットの中や歯並びの凹凸がみられる箇所については、専門的なクリーニングを受けてください。
Q11.歯磨きの重要性を教えてください。
歯周病の原因となる歯垢は少々粘着質ではあるものの、歯ブラシで落とせる汚れです。しかし、口腔内の全てをしっかり綺麗に磨けている人というのは少なく、正しく磨いているつもりでも、磨き残しが生じてしまうのが普通です。
麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院では、患者さま1人1人の口腔内の様子や歯磨きのくせに応じて、正しい歯磨きの方法を指導させていただいております。しっかり磨けているかなどのチェックもさせていただき、歯垢が綺麗に除去できるようなサポートを行います。
Q12.一生自分の歯を使用することもできますか?
歯周病や虫歯は適正に予防して、治療することによって、ほぼ100%制御できることが多くの研究からも分かっています。何らかの理由で歯を失ってしまう患者さまが多い現状ですが、理論的には一生、ご自身の歯で食事や会話を楽しむことができるのです。
そのためにも、歯周病や虫歯の予防歯科に通っていただくことが重要です。定期検診を受ける”かかりつけ”を持つことで、ご自身の歯の寿命を必ず延ばすことができます。
Q13.電動歯ブラシを使用する方が良いですか?
普通の歯ブラシも電動歯ブラシもデンタルケアグッズの1つですので、一概にどちらが良いとかはありません。正しくブラシを当てることが重要であり、使い方によって、効果は大きく異なります。
また、歯ブラシのみでは磨きにくい場所もあります。歯の歯の間などの歯ブラシの届きにくい場所は、歯間ブラシやデンタルフロスの併用がおすすめです。また併せて、週に1回は舌専用のタンクリーナーも使用すると、汚れの他、口臭の改善にも繋がります。
Q14.歯周病に良い歯磨き粉はありますか?
1番大切なのは、良い歯磨き粉を使用することよりも、歯をしっかりと磨くことです。ドラッグストアに行くと多くの商品が並んでいて迷ってしまうこともあると思いますが、歯磨き粉の効果は、補助的なもので、重要なのはしっかり歯ブラシを当てて磨けているかどうかにあります。
Q15.おすすめの歯ブラシを教えてください。
市販の歯ブラシは、「やわらかめ」、「ふつう」、「かため」といったものがありますが、患者さまの歯並びや歯肉等、口腔内の状況に応じてどういったものが合っているのかは変わってきます。
一般的に、大きさは、25mmくらいまでの大きすぎない歯ブラシが良いといわれていますが、歯科医や歯科衛生士に相談の上、歯ブラシを選ぶのが間違いないでしょう。
Q16.歯磨き粉や洗口液で歯周病は治りますか?
歯周病予防に効果のあるとされる歯磨き粉や洗口液も多数市販されていますが、あくまでも”予防効果”であり、”治療効果”はありません。歯肉の出血や腫れ、口臭改善等、良い効果を謳っているものばかりですが、原因は「歯垢」にありますので、汚れを除去しないことには歯周病は改善されないのです。
ただ、それらは口腔内を清潔に保つ上での効果には期待できるため、予防の意味でお使いいただくのは良いでしょう。 歯周病が市販のデンタルケアグッズで治るような未来になれば良いと思いますが、なかなか細菌感染を治すのは難しいです。必ず、歯科医院で適切な治療を受けてください。
Q17.歯槽膿漏と歯周病の違いは?
歯周病はもともと「歯槽膿漏」と呼ばれていましたので、同じものと思っていてください。 歯槽膿漏という文字からも分かる通り、歯肉から膿が出ることを指しています。現代においては、歯槽膿漏が少しずつ使われなくなってきており、「歯周病」とひとくくりに説明されることが多くなってきています。
Q18.歯周病は薬の服用で治りますか?
歯周病の薬はありますが、服用のみでは治りません。 原因菌である歯垢、歯石を取り除くことが最優先となりますので、毎日の歯磨き習慣の改善や歯科衛生士によるクリーニングが必要です。必要に応じて、抗生物質の服用を行い、歯周病の改善を促していきます。
Q19.歯石の除去は痛みますか?
歯肉の上に付着している歯石の除去はほとんど痛みがありませんが、歯肉の中の歯石の除去は少々痛みが出ることもあります。必要に応じて麻酔の処方も行えますので、安心して臨むことができます。
Q20.歯周ポケットってなんですか?
歯と歯肉の間の溝は”歯肉溝”と呼ばれていて、通常1mmほどの深さがあります。歯周病に罹患するとこの溝が深まり、歯周ポケットと呼ばれるようになります。歯周病の進行具合をみる1つの指標であり、歯周ポケットの溝が深まるほど重度と診断されます。
Q21.口呼吸の習慣は直した方が良いですか?
口呼吸は、口腔内の乾燥を引き起こすため、なるべく直したい習慣の1つです。 歯と歯肉が乾燥すると、歯周病菌が付着しやすくなる他、唾液によって汚れが洗い出されにくくなるため、細菌の増加を促してしまいます。
Q22.歯茎が下がってきたと感じます。どうしたら良いでしょうか?
私たち日本人は、歯の骨や歯肉が薄い人が多く、歯肉が下がりやすいといわれています。歯茎の下がる原因は、過度な歯磨きと歯軋りや食いしばりといった噛み合わせの不和です。まずは、そういった原因がないか、歯科医院にてしっかりと検査を受けてください。
また、下がった歯肉というのは基本的にもとに戻ることはありません。この場合、歯周形成外科といった外科処置が有効ですが、患者さまにとって最善の治療となるかも含め、ご提案させてください。
Q23.歯石とはどんなものですか?
歯石は唾液中に溶けている石灰成分で、歯に強固にこびりつきます。歯垢の付着した部位はザラザラとしていて当然、汚れがつきやすくなりますが、歯と歯の間や凹凸などの部分も磨き残しも多く、やはりセルフケアのみで歯石ゼロを目指すのはなかなか難しいです。 唾液が分泌される唾液腺開口部に近い部分も歯石が沈着しやすい場所ですので、上の奥歯の表側や下の前歯の裏などは念入りに清掃してください。
Q24.歯石を除去する頻度はどのくらいが良いですか?
患者さまによって、歯石のつきやすさは大きく異なるため、歯石除去の間隔や頻度も個人差が大きいです。一般的には、3ヶ月~1年といわれていますが、麻布エリアで歯周病治療を専門に行う当院では、担当医師や歯科衛生士が患者さまの口腔内をみて、適切な頻度をお伝えしております。
Q25.歯周病菌が全身に及ぼす影響とは?
歯周病は、動脈硬化、脳梗塞、誤嚥性肺炎、心筋梗塞といった病気と深い関わりがあり、命を脅かすこともあります。また、低体重児出産のリスクも高めるため、妊娠中や妊活中の女性はとくに気をつけていただければと思います。
その他、アルツハイマー型認知症、骨粗鬆症、メタボリックシンドロームといった疾患との関連も報告されているので、歯周病菌は全身のさまざまな部分に悪影響を及ぼす可能性があると判断できます。
Q26.骨粗鬆症の薬を服用中です。歯周病の治療は可能ですか?
骨粗鬆症の治療薬の1つに「ビスフォスフォネート」(BP製剤)というものがあります。こちらを服用している患者さまの場合、まれに抜歯等の外科処置で顎骨の壊死が起こることがあります。そのため、抜歯を含む、外科処置が必要になる症例では、骨粗鬆症を診ている内科の先生との相談も必要です。
ただ、外科処置以外の治療は何も問題ありませんので、プラークコントロールもスケーリングも可能です。歯周病が今以上に進行しないように、しっかりと口腔内環境の改善を目指します。
Q27.喫煙習慣は歯周病の進行を早めますか?
歯周病を悪化させる因子はさまざまありますが、その1つに喫煙習慣があります。煙草がよくないというのは周知の事実とは思いますが、歯周病の進行を早めることがあるというのも、覚えておいてください。
喫煙者は、非喫煙者と比べて、歯周病の罹患リスク及び進行する頻度が2~9倍も高くなるといわれていて、口腔内の歯周病菌の数にすると、2倍以上にもなります。
喫煙することによって、免疫を抑制するはたらきが生まれ、宿主、細菌の双方に悪影響が出ると考えられています。 肺がん、高血圧、心臓血管系疾患の原因にもなる習慣ですので、なるべく禁煙に努めてください。
Q28.歯周病でもインプラントはできますか?
インプラントは、事前の歯周病治療を必須としますが、禁忌ではありません。 歯を失った時の選択肢として、とても有効な方法ですので、是非選択肢に加えてください。
ただ、歯周病に罹患していると、インプラント埋入後にインプラント周囲炎にかかる可能性が高いといわれています。そのため、インプラントの治療する前に歯周病の有無を検査して、歯周病に罹患している場合はその治療を優先して行います。
また、術後は定期検診を受けていただき、予防を徹底していただきます。また、歯周病治療を専門とする歯科医院、歯科医とインプラント治療を専門とする歯科医院、歯科医はイコールではないため、適切な医院、医師を選ぶというのも1つポイントになります。
Q29.インプラント周囲炎の治療法はありますか?
インプラントの周囲が腫れている段階であれば、周囲の清掃を行い、細菌を除去することで回復に期待できます。しかし、周囲の骨にまでも感染が広がっている状態まで進行していると、治療は難航し、根本的な治療法も確立されていません。現段階では、超音波やレーザーを用いる治療法が研究されています。
Q30.インプラント周囲炎の予防は可能ですか?
インプラント周囲炎は、歯周病原菌が原因ですので、菌を徹底して除去することで、予防が可能といわれています。ただ、インプラント自体、比較的新しい治療法であるため、歯周病ほどの研究は進んでいなく、完全に予防できるといった科学的根拠はありません。
しかし、ここ10年の研究結果では、歯周病同様の方法で予防ができると考えられています。 歯周病を治し、プラークコントロールをしてからインプラントをすること、また、治療後も定期検診を受けていただくことがとても重要です。
まとめ
歯というのは、抜歯すると2度と生えてくることのないものですので、大切に使用することが求められます。しかし、虫歯や歯周病等、歯を失う原因となる病気に罹患している人は非常に多く、全て自分の歯のまま、長い生涯を終えられる人は少ないのです。
歯周病や虫歯の原因は、口腔内に停滞した歯垢(プラーク)です。これを、永続的にコントロールしていくことが、予防や早期発見、そして、歯の寿命を延ばすことに繋がります。
具体的には、口腔内の衛生指導(ブラッシング等)や全身疾患のコントロール、生活習慣の改善、歯周基本治療を主としていきます。また、その中で医師や歯科衛生士によって行われるスケーリングやルートプレーニングを受けていただき、口腔内を綺麗に清掃します。
患者さまの口腔内の状況に合わせて、1ヶ月~半年の間隔、1回につき、1時間程度のメインテナンスを行います。これを繰り返すことで、歯の寿命を延ばすことが可能です。
虫歯の予防には、これらに合わせて、フッ素の塗布も有効です。
歯周病については、歯周病学の研究も年々進み、歯周組織再生療法等外科処置を併用することで、中等度以上の歯周病も進行を食い止められ、回復できるようになってきています。ただ、重度の歯周病に関しては、現在でも「抜歯」が最善となる症例もあるのが事実です。
歯を失ってしまった時の選択肢として、今1番注目されているのはインプラントです。機能性や審美性に優れている方法であり、なるべく今まで通りに会話や食事を楽しみたい方にも最適です。しかし、インプラント周囲炎という病気の罹患リスクがあり、それが難治性であること、歯周疾患と大きく関連することも判明しています。
他の医療と同じく、歯科の分野も日々研究がされていて、適正に予防・治療することで、多くの虫歯や歯周病が制御できる時代となりました。これにより、ご自身の歯で、一生終えることも可能になってきています。
なるべく歯の寿命を延ばし、自分の歯で、違和感のない食生活をするためにも、日々のお手入れや定期検診の重要性について改めて見直していただけると幸いです。